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大阪高等裁判所 昭和62年(ラ)424号 決定

抗告人

堂本武

主文

神戸地方裁判所柏原支部が昭和六二年八月一三日になした不動産引渡命令のうち、抗告人に関する部分を取消す。

本件不動産引渡命令のうち、抗告人に関する申立を却下する。

理由

一本件抗告の趣旨及び理由は別紙記載のとおりである。

二当裁判所の判断

職権によつて、一件記録を精査すると、抗告人は、神戸地方裁判所柏原支部において、本件土地建物に対する本件競売手続続行中の昭和六〇年一〇月一七日に破産宣告を受け、同日その破産管財人に弁護士辻晶子が選任されたものであるが、本件破産財団に属する財産である本件土地建物については、抵当権の別除権に基づく担保権の実行として、民事執行法による本件競売手続がなされたものであるところ、破産宣告があると、破産財団に属する財産は破産者において管理処分する権限はなくなり、破産財団に属する財産である本件土地建物を管理処分する権利は、破産管財人に専属するものである以上、本件引渡命令は破産管財人に対する部分は正当であるが、破産者に対して本件土地建物の引渡命令をなしたのは、違法であつて、取消を免れないというべきである。

よつて、本件引渡命令のうち、抗告人に対してなした不動産引渡命令は違法であるから取消すこととし、抗告人に対する本件不動産引渡命令の申立を却下することとして、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官上田次郎 裁判官阪井昱朗 裁判官若林 諒)

別紙 抗告の趣旨

一、神戸地方裁判所柏原支部が昭和六二年八月一三日にした不動産引渡命令の決定を取消す。

二、買受人の申立を却下する。

との決定を求める。

抗告の理由

一、神戸地方裁判所柏原支部は由良正の申立により抗告人らを相手方として昭和六二年八月一三日不動産引渡命令をなしたが右由良正の申立は正当な理由ではなく同引渡命令は不当である。

二、よつて執行抗告を申立てる次第です。

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